日本人が海外で犯罪者に?!
知らなかったではすまされないタブーとは?!http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20140421/393933/?ST=career
 日本人駐在員が現地でのタブーを知らずに大問題になり、企業が訴えられたり、罰金を支払うことになったという話はよく耳にします。
「面接中に出身地を質問した」「年齢制限・性別を設けた」「親会社からの日本人をマネージャーにし、現地スタッフを昇進させなかったのは人種差別」などと日本企業が訴えられた例は多数あります。
 出張中に現地の法律を知らなかったばかりに、多くのペナルティを受けることになり、うまくいっていたビジネスが台無しになったという日本人も多く存在します。今回は日本と違う海外のセクハラやタブーについて、生活経済ジャーナリストの柏木理佳(かしわぎ・りか)氏に解説していただきます。
自分のセクハラ行為は企業の責任になることも
セクハラ対策で企業も自分も守る
 米国では、面接官である日本人が女性応募者に対して「女性従業員が、セクハラや昇進・昇格での女性差別を理由に、米雇用機会均等委員会(EEOC)に申し立て、米国三菱自動車製造が約3400万ドル(約49億円)を支払ったことは大きく報じられました。
 近年では、日本企業が親会社から派遣した日本人をマネージャーなどにし、現地のスタッフを昇進させなかったことが人種差別にあたるとし、訴えられている企業が増えています。私用のメールが差別的な内容であったと問題視され、敗訴している例もあります。
 企業対策と同様に、個人でも十分に意識する必要があります。米国の駐在員として赴任したばかりの日本人男性(55歳)が、米国人女性応募者の面接を担当。その面接で「出身地はどこですか?」「家族構成は?」などと質問したことに対して、人種差別を理由に訴訟問題になった例があります。
 また、帰り際に女性が長身だったために「身長は何センチですか? うらやましい」「赤色の素敵なスーツだね」などと褒めた行為もセクハラにあたると指摘されました。席を立ち、面接が終わったからといって気を緩めたのかもしれませんが、面接は会社を出るまで続いています。
 もちろん、プライベートな話題が訴訟の対象になる場合もあります。こういった質問や行為をしてしまった場合、その責任は個人だけではなく、企業が批判され罰金を科せられることになるのです。
 企業の管理職は、セクハラ防止の認識を持ち職務として明示すること。セクハラ防止を組織の方針として明確に打ち出し文書化しておくこと。企業は、全社員にセクハラ防止のための研修を行うこと。セクハラに関する相談窓口を設けること。中立的な専門家、または社外の専門家を紹介する対策をとることが必要です。
 企業によっては、面接時などに質問してはいけない項目が公示してあります。十分に注意する必要があるのです。
結論:海外では個人の意識は企業の意識になる
日本ではちょっとした行為でも、海外では許されないことも
知らないと数百万円もの罰金に
 シンガポール駐在中、同僚のシンガポール人の男性が騒いでいました。「日本人男性が地元の新聞の一面に出ているよ」と。
 一面に大きく写真が掲載されているその姿をよく見てみると、なんと、立ちションをしているではありませんか。
「日本では、立ちションは当たり前なのか? シンガポールでは露出行為、セクハラ行為。とても恥ずかしい行為だ」と、私は、次々に非難されました。
 シンガポールでは、ゴミ・煙草の投げ捨て・痰の吐き捨ては、1000シンガポールドル以下の罰金など、2回目は2000シンガポールドル以下の罰金、作業着で公共場所の清掃作業などが科せられます。水洗トイレの水を流さない場合は、150シンガポールドル以下の罰金、2回目は500ドル以下、3回目は1000ドル以下の罰金です。
 煙草の吸い殻を道路脇の排水溝に投げ捨てた人に対しても罰金が科せられ、同時に過去にもタバコのポイ捨てをしていたことが分かり強制労働命令も科された例があります。また、車から公共の場所へのゴミ投棄では、罰金が科されただけでなく、そのとき乗っていた車まで没収されることがあります。
 
それだけではありません。近年、シンガポールではわいせつ行為として罰金・禁固刑の処分を受ける外国人が増えています。ナイトスポットで、酔って女性を触ったとして5000シンガポールドルの罰金、警官に罵声を浴びせたことで追加の罰金、2000シンガポールドルが科せられています。
 また、女性の品位を傷つける言動があった場合、1年間の禁固刑、罰金、もしくはその両方の刑に服さなければなりません。この場合の言動の中には、言葉で表記したり、音を発したり、物をみせびらかしたりする事も含まれます。
結論:配慮不足・マナー違反は法律違反につながる
屈辱的な対応は、差別的行為になることも
相手がおびえていればセクハラになりかねない
 中小企業に勤務する日本人駐在員(60歳)が、日本からの出張者をゴルフで接待している最中に、マレー人のキャディの目にボールが当たってしまいました。ところが、出張者は、駐在員が間に入る前に、「ごめんね。いくら払えばいい?」と十分な謝罪もせず質問してしまいました。そのことが屈辱的であったと、手術費用にプラス慰謝料として高額な金額を要求されたのです。結局、半年かけて300万円を払い和解しましたが、最初の対応が紳士的であれば違っていたでしょう。人種差別は、相手が屈辱的だと感じたことから始まるのです。
 同じように、シンガポールと合弁会社の日本人社長65歳は、数人のシンガポール人秘書に対して、採用決定後の入社したばかりの時期に「ドライブにいかないか?」「その洋服かわいいね」「きれいになったね」などと口説いていました。車に乗り込むときにお尻に触れてみたり、肩を抱き寄せるように触ることもありました。
 1年後、その数人の秘書たちが話し合い、一緒に訴訟を起こしたのです。社長にとってみたら軽い気分でからかっただけかもしれませんが、相手がおびえていれば、セクハラになりかねません。入社したばかりの時期で、まだ右も左も分からないときに誘われたら、はっきりと断りにくく、おびえてしまいがちです。弱い立場の人は、強い立場の人の誘いを断りにくいのです。
結論:上下関係の上にある人は、無理な誘いを慎むこと