米オバマ政権の保護主義をめぐり議論が続いています。
 仮に関税ゼロになれば米国製品が激安で入ってくることになり、すでに価格が安くなっている日本製パソコンよりさらに安いパソコンが米国から輸入されることになります。食品も同じ。大量生産による低価格の加工品などが大量に入ってきます。国産品より安いでしょうから、日本では産業の空洞化が起きるでしょう。直撃を受ける産業では、さらなるリストラが進むことが懸念されます。
 今、製造業をリストラされた人たちが、タクシー運転手やコンビニ、居酒屋の店員、農業法人などに転職しています。タクシーの運転手は最近若返っているようですが、あるベテラン運転手は「寮の設備もあるからタクシーの運転手としての仕事がいいと思うだろうけど、勤務時間も不規則だし、収入も過去最悪に激減。忍耐力も必要だし道を覚えるのに時間がかかる。これまでも新人は3カ月で辞めるのが多かった。製造業から流れてきても不慣れだし、もっと早く辞めちゃうんじゃないか」と顔を曇らせて言います。
 ところが多くの産業で業績が低迷する一方で、インターネット経由で販路を拡大する企業の多くが、業績を伸ばし続けています。介護や農業といった分野の拡大が見込まれながら、労働力の需要と供給のミスマッチは拡大するばかりで、失業率はみるみる高まっています。
 私は製造業などの産業にこだわり続けるより、空洞化の進まない産業に方向転換することをオススメします。製造業などが業績回復するまで待ち続ける間に、働くことへの自信を失ってしまう心配があるからです。
 やりたい仕事と、実際に働き口がある仕事のズレが大きいほど、働くことへの喪失感が強まります。国は古いシステムのままハローワークを存続させるのではなく、未経験の仕事には研修や指導者を用意するなど、早急な対策を考えてほしい。
(生活経済ジャーナリスト・嘉悦大学短期大学部准教授)