金融危機対策として連合は先月13日、厚生労働省に対し「非正規労働者等の緊急雇用対策」を要請するなど、派遣をはじめとする低所得労働者に対する支援意識が高まっています。
 同18日には労働基準法改正案が一部修正を経て衆院を通過しました。施行は平成22年4月です。時間外労働の賃金割増率「25%以上50%以下」について、月60時間を超える部分は「50%以上」に引き上げると定めました。月60時間オーバーというと1日平均4時間以上の残業になり深夜まで残業をしている人ですね。また有給休暇の年間5日分に関しては、1時間単位で取得できるようになります。しかし、中小企業には適用をしばらく猶予するようです。
 これで、確かに過度な残業は減少しそうですが、まだまだ日本企業全体の残業が減るほど影響を及ぼすとは思えません。有給休暇を時間単位で取ることになると午前中だけ休むことなどが可能になりますが、長期休暇としての取得が減り、消費の活性にもつながらないのでは?
 業績悪化で人件費を削減したいときに残業代が上がれば、リストラせざるを得ない企業も増えるかもしれません。でも、知人の会社では業績が低迷していたときに、無給休暇を数カ月取らされたというのです。知人は「リストラされるよりも有給休暇と無給休暇の利用でリフレッシュできた」といいます。
 無給休暇は、業績悪化時に賃金の6割を保障して従業員を休業させる一時帰休よりさらに厳しいもの。中には年間で最大6カ月も休暇を取った人がいたそうです。それでも知人は労働時間も給料も減少したものの、すでに会社に復帰しています。
 企業にとっても急激にリストラした場合、これまで育成してきた人材を失うことになり、業績が回復して新たに採用しても、また育成に時間とコストもかかります。辞めさせる側も辞める側も長期的視野での工夫が必要です。
(生活経済ジャーナリスト・嘉悦大学短期大学部准教授)