このところ企業の雇用問題が次々に明るみに出ています。
 大手居酒屋チェーンでは、アルバイトの労働時間について、30分未満の端数を切り捨てるなど、時給を不正に計算していました。この問題を労働基準監督署に内部告発したアルバイト店員はクビになり、解雇は内部告発の報復だとして、解雇の無効を訴えています。同社は不当解雇は否定していますが、不正な時給計算は認めています。
 しかし、こうした問題は氷山の一角なのです。会社を信用して無頓着な人も多いですが、時給契約で働いている人は労働時間の管理を人任せにしてはいけません。タイムカードを押した時間をメモしておき、時給と労働時間から自分で計算した給料と、実際に支払われた金額をチェックすること。疑問点があれば会社に確認しましょう。
 労働時間の管理で気をつけたいのは待機時間です。接客業などで「忙しくなるかもしれないから帰るのを少し待って」と言われて待機し、結局何事もなく終わってしまった場合、働いた時間に計算されないことが多いようです。しかし、指示されたわけですから、当然業務となります。
 また採用にあたり、面接などで「うちは残業代は1・5時間しか出せないから」といわれ、よくわからずに納得している人が結構います。これは雇用される側の弱い立場を利用したサービス残業の要求ともとれます。入社してからでも遅くありません。上司や先輩に「面接でいわれた条件は本当のことですか?」と確認することです。不公平な条件をのまされていることもあるからです。
 このように、雇う側が雇われる側を完全に見下したような雇用関係は、戦後の日本的な資本主義ではほとんど見られなかったものです。お金の力が強くなりすぎたために、社会から労働を尊敬する気持ちが薄れてきたのでしょう。本当に『蟹工船』の時代に逆戻りしたようで、情けない思いがします。
 (生活経済ジャーナリスト・嘉悦大学短期大学部准教授)