ただでさえ赤痢、食中毒、マラリアの危険が
 オリンピックの開かれる夏の中国で、まず気をつけなければならないのが感染症である。北京や上海といった大都市でさえ、路地裏に回れば衛生面は日本とは大違い。  とりわけ、この夏、心配されているのが、四川大地震の後遺症。発生から4週間。犠牲者の数は6万8000人を超え、負傷者は36万人にも達する。体力も免疫力も落ちた負傷者の間に、細菌やウイルスが感染したらひとたまりもない。
 しかも、季節はこれから暑さ、湿度ともにうなぎ上りとなるだけになおさらだ。30度を超す高温、高湿度の状況で感染症が発生すれば、支援している人たちも危険にさらされることになる。
 既に気になるニュースが入ってきている。細菌が傷口などから入り、筋肉などが体の組織が死んでしまう怖ろしい感染症、ガス壊疽(えそ)の発生だ。一部報道では3万5000人とも言われている。中国政府はガス壊疽患者は58人としていた。今後も、新たな感染が発生しても、全容の好評は期待薄だ。
 問題は、感染者を古くて設備の整っていない国営病院に隔離しても、被災下で十分な治療が期待できないことだ。冷暖房設備や注射器なども十分ではない。消毒剤が不足との情報もある。国際的な医療支援にも限界がある。
 飼い主がいなくなった犬が野犬化され狂暴になっているため、狂犬病の拡大も予想される。毎年2500人ほどが感染し、そのうち9割が死に至っている。今年はその数倍の死者が出るかもしれない。それだけではない。被災地の周辺からヒトを通じて、さまざまな感染症が飛び火する可能性が捨てきれないのだ。
 このほか、夏の中国では、北京や上海を含めた全域で赤痢や食中毒、A型肝炎、破傷風などが発生。福建省、広東省、四川省などでは三日熱マラリアがみられる。
 大都市だから大丈夫だろうという油断は禁物。生ものや水、蚊、野犬にはくれぐれも気をつけたい。市場や駅といった雑多な人々が集う場所に行くことも、極力控えた方がいい。かつて鳥インフルエンザやSARSが大流行したことは記憶に新しい。リスク管理はキッチリ。感染してから悔やんでも後の祭りである。