40歳のAさんは「派遣歴5年目だけど、もう一生、正社員にはなれないわ」と嘆いていました。というのも、Aさんと同じ部署で新しく正社員を募集しているからだというのです。若い正社員が採用されたら、Aさんが正規雇用される可能性は少なくなりますね。
 でもちょっと待って! 労働者派遣法では、派遣で3年以上働いたAさんと同じ仕事内容で、会社が新しく正社員を募集する場合、Aさんに意思を確認し、優先的にAさんを直接雇用しなければならないと決められています。
 この法律は平成16年、「派遣対象業務(派遣社員を使ってもいい業種)の拡大」と「派遣受け入れ期間の延長」について改正されました。例えば、以前は派遣が許されなかった製造業務などにも派遣が認められるようになりました。また派遣期間についても、それまで最長3年と決められていたソフトウエア開発など26業務については制限がなくなり、それ以外の販売や営業などの一般業務は、最長1年から3年に延長されました。
これでは派遣社員をもっと使うように指導しているようなものですが、代わりに派遣スタッフも正社員になるチャンスが増えました。派遣受け入れ期間が過ぎても働き続けてほしい派遣スタッフに対して、会社は直接本人に雇用を申し入れなければならなくなったのです。
 またAさんのように3年以上経過している派遣スタッフがいる場合、同じ仕事内容で新たに正社員を雇うときは、優先的に派遣スタッフに「直接雇用したい」と申し入れる義務が出てきました。ただし、ここでいう直接雇用は派遣会社を通さずに雇うという意味で、契約社員なども含まれ、正社員とは限りません。それでも派遣社員よりは待遇がいいかもしれません。
 「派遣ではなく正社員として働きたい」と会社に意思を伝えておくことは大切です。Aさんの思いが伝われば、その門は開けるかもしれません。