先日、30代の知人が就寝中に心臓性の突然死をしました。彼の死は、残された妻と子供だけでなく、職場の人にもショックを与えました。彼はどうみても過労死だったからです。
 過労死は、長時間労働などによる蓄積した過重負荷や、脳血管疾患、心筋梗塞(こうそく)などの心疾患で急死した場合、死亡前の6カ月間の労働時間により判断されます。労働基準法では労働時間は週40時間と定められていますが、この会社では就業規則を守っている人は誰もいません。彼は日付が変わるまで残業し、土日もタイムカードを押さずに出勤していました。
 会社が労働者に残業を求める場合は、労働者との協定を書類にして労働基準監督署に届けなければなりませんが、会社はそんな書類は提出していませんでした。これは労働基準法違反にあたります。「過重労働による健康障害を防止するために事業者が構ずべき措置」を怠っていたと考えられます。
 ところが会社は彼が過労死であることを認めませんでした。それは彼が大学院で勉強していたからです。亡くなる前、彼は自宅でも寝る間を惜しんで論文を作成していることを職場の人に漏らしていました。「上司は残業をするよう圧力をかけていない」「切羽詰まった締め切りもないのに残業をしていた」「論文作成が負担だった」というのが会社側の言い分です。
 結局、彼は過労死として労災認定されませんでした。実際に過労死の認定は請求件数の半数以下に留まっています。
 「働き過ぎ」は要注意です。休まなければいけません。でも「そんなこと言っていられない」というときは、(1)もし体調が悪くなったら状況を記録する(2)上司や経営者が発した圧力的な言葉を記録する(3)職場のカウンセラーや上司、同僚に体がきついことを伝える-などの自己防衛も必要です。
 とにかく体調不良を感じたときは病院に行くこと。それは過労死の証拠にもなるのです。