<北京五輪開催で世界に注目された中国の食品事情>

 2008年8月8日、いよいよ北京五輪が開催される。各地でプレ北京五輪大会が始まった。金メダルを獲得できる数は32個と予想されている。金メダル獲得数は世界一の数である。しかし一方で、何も問題が発生することもなく閉幕出来るのか疑問の声も増えている。たとえば中国食品問題である。
 1月8日中国農業部の高鴻賓次官が国務院新聞(報道)弁公室主催の記者会見で「今年の北京五輪大会期間中、農業部は北京の農産物市場の十分な供給を保証し、食品の品質と安全を保証し、供給の多様化に配慮する」と発表した。さらに「北京五輪期間中の農産物供給・安全の保証では、対策の進み具合も各地でばらばらで、一致していない。中国には2億4000万の農家があり、農業生産の組織化率が低い。農業部は対策の成果を全面的に定着させ、長期的な仕組みづくりに力を入れる」などと付け加えた。(新華社通信1月8日、中華人民共和国公式ホームページ)
 昨年11月北京五輪組織委員会による選手が宿泊する選手村に納入される農産物には、厳しい検査を命じた。具体的には以下のとおりである。
①調理場には24時間体制で警備員が常駐
②食糧貯蔵区域はカメラで監視される
③食品輸送車両には全地球測位システム(GPS)が取り付けられる
④毒味役としてマウスが使用される
 私が見る限り徹底した管理体制である。
ところが、そんな中国政府の対策をよそに、すでに20カ国の選手たちが合宿地として中国ではなく日本を希望している。場所が確保できない、大気汚染、食の安全性への不安としているが、私は最大の原因は食への不信だと思う。試合直前まで中国に入国しないようだ。選手たちがここまで食事にこだわる理由は、食中毒になることを懸念しているからではない。ドーピング薬物検査で失格になることを恐れているためである。選手たちは、家畜や野菜の成長を促すためホルモンや抗生物質などの化学物質を使用している中国食品を摂取することでドーピング薬物検査で失格となる、とも考えている。実際にこういうことが本当に起こりうるのかどうかは定かではないが、ドーピング禁止(制限)薬物には、私たちが無意識に口にしているアルコール 、風邪薬や解熱剤もリストに並んでいる。口にするあらゆる物に関して選手たちは過敏にならざるを得ないのだ。
選手だけでなく世界中のマスコミが、北京五輪の試合結果以上に中国の食品事情に注目している。選手のドーピング問題が発覚したとき、その責任にされないよう中国の食品の改善、そしてそれができたら十分に世界にPRするさらなる中国政府の戦術も必要かもしれない。